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フィンランド発のアップサイクル・カルチャー・イベント「クリーニングデイ」

クリーニングデイ・ジャパン森下詩子さんが目指す、
モノを捨てずに循環させていく、サステナブルな未来。

フィンランドで2012年から始まったクリーニングデイは、「リサイクルのハードルを下げる」「地域交流」を目的として開催されているリサイクル・カルチャー・イベント。クリーニングデイを2014年にいち早く日本に招致し、アップサイクル・カルチャー・イベントとして全国各地で開催されるまでに成長させた森下詩子さんに、「モノ」を通して人と人がつながるおもしろさや、サステナブルな未来を目指す中でのリユースの大切さなど、さまざまなお話を伺いました。また、クリーニングデイ・ジャパンが取り組む、古いモノに新たな価値をつける「アップサイクル」の魅力についても教えていただきました。 (2018年4月24日作成)

日本とフィンランドの共通点は
「モノ」を大切にするマインド

これまでに何度もフィンランドを訪れているそうですが、やはりフィンランドの人々は「リユース」に対する意識が高いのでしょうか?

市のリサイクルセンターやリユースショップ、フリーマーケットを上手く使ってモノを手放すことや、お金をかけずに手に入れることが自然な気がします。フィンランドは物価が高いということもあるかもしれませんが、壊れたり、破れたりしたモノを修理(リペア)して、長く使う文化もあると思います。サマーハウスを自分で作るようなDIYが得意な人も多いですし、穴があいた毛糸の帽子やソックスの繕い方を、図書館の一室で年配者が若者に教える集いがあるのを聞いたことがあります。

ヘルシンキには、ほぼ毎日フリーマーケットが開催されている広場がある

リペアやリサイクルが日常的に行われているんですね。

そうなんです。街にはリユースショップもたくさんあり、フリーマーケットも盛んです。だから、クリーニングデイも始まってすぐに浸透していったのかなと。クリーニングデイは年に2回(5月4週目・8月最終週の土曜日)、誰でもどこでもフリーマーケットを開ける気軽さもあって、フィンランド全土に広がり、今ではすっかり定着したイベントとなっています。私はクリーニングデイが初めて開催された2012年にフィンランドに長期滞在していて、その当時住んでいたアパートのオーナーの子供たちが、家の前でクリーニングデイのフリーマーケットをする計画を立てていたことからその存在を知りました。

フィンランドのクリーニングデイの様子

それが森下さんがクリーニングデイを知るきっかけだったんですね。森下さんご自身は以前からリユースに関心があったのでしょうか?

そこまで関心はなかったのですが、フィンランドに長期滞在していたときから、リユースショップをよく利用するようになりました。ある日、4ユーロくらいで買った古着のスカートをフィンランド人の友達に「すごくいい買い物したね!」と褒められたことがあって、フィンランドでは「新しくいいモノを買う」ことより「古くてもいいモノを見つける」ことに価値があることを感じたんです。いつのまにか、日本人は新しさに価値をおくようになりましたが、モノを大切にするマインドは、元々、日本人の中にもあったはずですよね。昔は、着物や浴衣などをさまざまなモノにリメイクしていて、工夫や習慣が生活の中に根づいていました。私がフィンランドで感じた心地よさは、モノを大切にして循環させるマインドが、本来日本人が持っている価値観と共通する部分があったからかもしれません。

1本の映画をきっかけに始まった
クリーニングデイ・ジャパンの活動

そもそも日本での開催のきっかけは、森下さんが映画配給のお仕事で出会った1本の映画だったそうですね。

『365日のシンプルライフ』というフィンランド映画に出会って、日本で配給したいと動き出したときにクリーニングデイのことを思い出したんです。主人公の男性が失恋を機に自分のモノをすべて倉庫に預けて、自分にとって必要なモノを1日ひとつ持ってくるという実験的な生活を追った映画なのですが、「モノ」に対する価値観を考えさせられます。モノについて考えるこの映画を観た後に、モノに対するアクションとしてクリーニングデイができたら、映画を観るだけで終わらない「自分ごと」になると思い、フィンランドのクリーニングデイ事務局に問い合わせたんです。最初は「日本で!?」と驚かれましたが、日本での開催をとても喜んで協力してくれました。

すばらしいアイデアと行動力ですね。

ただ、フィンランドではフリーマーケットのイベントとして定着していますが、日本で開催するならただのフリーマーケットにしたくないという思いがあり、リサイクルから一歩進んで、古いモノに新しい価値をつけて生まれ変わらせる「アップサイクル・マーケット」をコンセプトとして開催することにしました。

実際、クリーニングデイはどのような形で開催されているのでしょうか?

毎回、全国の会場ごとに開催者が企画するので、開催内容も規模も異なります。第1回は、アウトドアメーカーのパタゴニアさんのスペースをお借りして、フリーマーケットと布や皮などの端材を使ってアクセサリーなどを作るワークショップを開催しました。その後も、フリーマーケットはもちろん、物々交換や廃材を使ったワークショップもよく行われています。それぞれの地元の団体や店舗、作家さん等と協力して開催されていることも多いです。

活版印刷の帳面&ハギレでアップサイクルなものづくり。クリーニングデイ福岡

9回目となる2018年のクリーニングデイは5月26日に開催されます。

前後の週を合わせて、北海道から九州まで全国20会場以上での開催となりそうです。初開催の会場も多いので、楽しみです。2018年は「リペアカフェ」に力を入れ、お茶を飲みながらみんなで楽しくリペア作業をできるような場をつくりたいと思っています。リペアすることによって新しいデザインに生まれ変わったモノを見ると、マイナスがプラスになっていく楽しさがあります。鎌倉では、欠けた食器を修復する「金継ぎ」や洋服のお直しなどのリペアカフェを開催予定です。

「リペアカフェ@かまくら長谷BASE」で行う、金継ぎ体験ワークショップ
2018年は「クリーニングデイ・ヤーン」を立ち上げた

大切なものを次の人に引き継ぐ
ストーリーのあるリユース

クリーニングデイが多くの人々に広がれば広がるほど、さまざまなアイデアが生まれていきそうです。

昨年、本の交換に特化した「クリーニングデイ・ブックス」を立ち上げた方がいらして、すごくいいなと。そういったジャンルに特化したクリーニングデイがあってもいいと思うんです。今年は「クリーニングデイ・ヤーン」という、「糸」に特化したクリーニングデイも立ち上げました。「糸」ってすごくアップサイクルな素材なんですよ。着古したTシャツの裂き糸や使っていない毛糸などを持ち寄って、みんなで編んだり、織ったりできればなと。自分の手を動かすと、やっぱり愛着が湧くんですよね。アップサイクルなアイデアなら、フード系でもなんでもアリです。フリーマーケットではいらないモノを売っているようなイメージもあるかもしれませんが、クリーニングデイでは出品するモノにメッセージを書いたタグをつけて、その人が大事にしていたという「価値」を次の人に伝えるアップサイクルを目指しています。「本当は譲りたくないけど捨てられない」など、思い入れのある品をちゃんと出せる場でありたい。出品者の思いや願いのメッセージをタグに書いて並べると、手に取った人にも伝わって、お互い嬉しくなりますよね。そこで「モノ」に対する価値も変えていければなと。

本の交換に特化したクリーニングデイ・ブックス

大切なモノが次の人に引き継がれていく、ストーリーを感じられるリユースはとても素敵ですね。

自分のモノを人に譲った後、その人がさらにそれをアップサイクルしていると、「こんな使い方があったんだ!」と驚くこともあります。クリーニングデイは各地で開催されるようになりましたが、関西でも不思議と値下げ交渉などがないという話も耳にしました。もしかしたら、メッセージが書いてあると値切りにくいのかもしれません(笑)。次の人に渡った時点で、もう、モノの価値は変わっているんですよね。

できる範囲で継続することが
リユースの可能性を広げる

さらに多くの方にリユースの輪に参加していただくにはどのようなアプローチが必要だと思いますか?

フィンランドで私がよく行っていたリユースショップはディスプレイがとてもわかりやすいんです。洋服がだいたい色別に並んでいて、たとえば黒のスカートが欲しいと思ったら、黒のエリアから探せばいい。欲しい色を選んで、そこからサイズや値段を見て決めます。パッと手に取ったのが少し高かったりすると、「これはブランド品だったんだ」と思うくらいで、みんなあまりブランドを気にしていないようです。リユースショップも、ディスプレイやイメージ、入りやすさなどを変えていくともっと間口が広がるかもしれません。

フィンランドのリユースショップ

セカンドストリートも明るい店内とキレイなディスプレイで、どなたでも気軽に入っていただけるお店づくりを目指しています。新しいモノにはない、リユース品だからこその価値をもっと多くの方に知って欲しいですね。

宝探し感覚の楽しさはリユースショップならではですよね。クリーニングデイを始めてからの5年間で変わってきている実感はありますが、それでもまだ、リユースやリサイクルに抵抗があって輪に入れない方もいるかと思います。リユースショップの良さは、安さ以外にもあると思うんです。気に入っていたけど、もう履けなくなってしまったとか、捨てるのが忍びないモノをリユースショップに持っていくことが、フィンランドのようにもっと自然になるといいですね。使わなくなった大切なモノを誰かが買ってくれたときって、すごく嬉しいんですよ。そういう気持ちをもっと多くの方に楽しんでいただきたいですね。

スーパーセカンドストリート大宮日進店のディスプレイ

「ミニマリスト」という言葉が流行るように、時代によって「モノ」に対する考え方も変化があるような気がします。

まさか「ミニマリスト」という言葉が流行るとは思いもしませんでした。東日本大震災をきっかけに、日本でも価値観の優先順位の一番は「モノ」ではなくなってきていると実感しています。新しいモノを買わずに、フリマアプリやリユースショップを賢く活用している方も増えていますよね。ミニマルに暮らすのもかっこいいよね、というような、シンプルライフにシフトしている方も増えたようです。2回目のクリーニングデイのあと、これからどうなっていくのか不安を感じたこともありましたが、ありがたいことに毎回、新規で開催する会場や、2回、3回とリピートして開催する会場もあり、規模も大きくなりつつあります。アップサイクルを楽しむ方たちとゆるりとつながりながら、長く続けていくことを大切にしようと決めたらラクになりました。無理せずにできる範囲で継続していくことが、サステナブルな未来への第一歩だと思っています。

撮影:疋田千里(人物)

INTERVIEW GUEST
  • kinologue主宰/クリーニングデイ・ジャパン代表
    森下詩子(もりした うたこ)

    映画宣伝担当として100本近い映画に携わり、2011年よりワークショップ・プロジェクト「kinologue(キノローグ)」を主宰。2014年よりフリーランスで北欧に特化した映画配給を始め、フィンランド映画『365日のシンプルライフ』などを毎年1本ずつ共同配給。2014年よりクリーニングデイ・ジャパン事務局代表。2018年のクリーニングデイは、第9回を5月26日に、第10回を8月25日にフィンランドと同日開催予定。http://cleaningday.jp/

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